トップでゴールラインを駆け抜ける。
あこがれ。
そこに至るまでに、本当にたくさんのことを考えているもの。
笛が鳴る。
スタートラインの後方に立つ。
風の音が聞こえる。
緩やかな、向かい風か…。
On Your Mark! (位置について)
号令がかかると、
スターティングブロックに乗る。
一度、ゴールを見つめてから、
視線はスタートラインの少し前に。
Set ! (用意)
ゆっくりお尻を上げながら、
前足に力を載せていく。
ピストル号砲!
一歩目をスムーズに着地させる。
それから8歩目までは、下を向いたまま。
そこから5歩かけて、少しずつ視線を起こしてくる。
13歩で、完全に体が起きて前を向いたとき、
視界に誰もいないのを確認する。
よし、今日は走れている。
静かにクラッチをつなぐように、加速モードに入っていく。
おっと、誰かが視界に入ってきたか。
慌てない。
力まない。
ただ、前へ。
視界から、あらゆるものが消える。
前だけを向く。
終盤、体の動きがバラバラになってくる。
かまわない。
きちんと走ろうとしなくていい。
足を前に出せば、あとはどうでもいい。
ゴールラインが近づいてくる。
足は、止まってない。
前進を続けられている。
視界に誰もいないからって油断するな。
少しだけ、胸を前に出す。
ゴールラインを超える。
よしっ!!
一着でゴール。
ほぼ、レースプラン通りの展開。
思い通りに走れたことが、
ものすごく気持ちいい。
かけっこの醍醐味。
誰も自分の前を走らなかったのって、
高校3年の6月くらいが最後じゃなかったかな。
29年半ぶりの快挙?
なんだか、ようやく、戻ってきた気がした。
これ、経験してもたら、あかんね。
もうやめられないかも知れない。